「かわいい」はどこまで追求できるのか?
VRモード搭載をしていることが特徴の美少女バトルRPG「オルタナティブガールズ」について、こだわり続けた「かわいさ」をどうやってつくりあげていったのか、モーションアクターの細川桃仁さん、「オルタナティブガールズ」3DCGディレクターの海老沼宏之とモーションリーダーの小沼千紘に話をききました。
スマートフォンゲームでモーションキャプチャを取り入れたワケ
なぜ「オルタナティブガールズ」ではモーションキャプチャを取り入れようと思ったのですか?
海老沼:
「オルタナティブガールズ」(以下オルガル)では、スマートフォンというメディアの中で様々な制限はありますが、「3DCGのクオリティはとことん追求していこう!」ということが当初からチームとしての目標でした。しかし「オルガル」は、300以上あるストーリーを全て3DCGで表現、そして1分30秒のVRストーリー、バトルモーション等…開発当初から、アニメーターはモーション数の多さに頭を抱えていたんです。このモーション数を作り、クオリティも担保するためには、「モーションキャプチャ」(以下、「モーキャプ」)を取り入れるしかないと思い、プロデューサーに相談をし導入を決めました。
小沼:
また、「女性らしさ」や「かわいい」動きは、モーキャプが得意とする部分だったので、クオリティの中でも特に「かわいさ」を追求するという意味で、モーキャプは絶対に取り入れたいと思いました。
導入してどうでしたか?
海老沼:
モーキャプを導入したことで、手付けよりも圧倒的に時間を短縮できるので工数削減という意味でもとても意味がありました。もちろん、表現のクオリティにおいてもモーションアクターさんたちの動きによって、私たちが気づいていなかった「かわいさ」であったり、「こういう動きをしたらかわいいんだ」という気づきがあったりと、キャラクターの奥深さを出すのにかなり効果的でした。
小沼:
女性の細やかで繊細な仕草をリアルに動きに反映できることで、「かわいい」のクオリティがより高まりました。また、開発当初からずっと同じアクターさんと演技を通してキャラクター性をつくり上げていくことで、キャラの命とも言える個性を動きに反映できた点でとても効果的だったと思っています!
モーションアクターにとって大切なこととは
細川桃仁(Hosokawa Tony)(写真右)
イタリア系アメリカ人の父と日本人の母を持つハーフ。 2歳の時、モデル事務所にスカウトされ芸能界入りをする。 少女コミックなかよし(講談社)や別冊マーガレット(集英社)のレギュラーモデルを経て、「エルティーン」(近代映画社)の表紙レギュラーを4年間勤めるなど、20歳までモデル業をしたのちに舞台の世界へ。 「美少女戦士セーラームーン」ミュージカルなどで活躍し、2001年より「活劇座」に参加。現在は、ゲーム・映画のモーションキャプチャアクトレスとして活躍し、出演作品数は、300タイトルを超える。
いつからモーションアクターをしていたのですか?
細川:
2歳の頃からモデルの仕事をしていました。ずっとモデルをやっていたのですが、身長が思ったよりも伸びず、限界を感じていました。そんな時、宝塚に出会い、演劇という世界も楽しそうだなと思ったんです。そこからは、舞台とモデルを両立していたのですが、24歳の頃に、モーションアクターという仕事に出会い、これは天職かもしれないと思いのめりこんでいきました。オンラインゲームの仕事が初めての仕事でした。
今まで何キャラクターくらい演じたんですか?
細川:
モーションアクターのみをするようになってから15,6年くらいなのですが、500キャラクター以上演じたと思います。ちゃんと数えたことはないのですが。女性だけでなく少年や中性的な男性の役なども演じました。
海老沼:
トニーさんは、動きのストックがかなりあって、現場でいろいろと提案してくれるので本当に助けられています。自分たちの想像できない動きも提案してくれて。
どうやって「かわいい」仕草や動きの研究をしているのですか?
細川:
モーションアクターは、動きのストックをいくつ持てるかも重要だと思っています。また、「こういうのどうかな」や「こういう表現をしたいんだけど」と聞かれた時に、提案できるアクターでありたいと思っています。
そのため、動きについては、アイドルの方が出演しているバラエティ番組や海外ドラマをみて日々研究しています。主役だけでなく周りにいるキャラクターや人もみるようにして、かわいい動きをしている人を探しています。そのほかにも、なにか「かわいい」というフレーズを雑誌でみたら、必ず見るようにしています。どういうものがトレンドで何が流行っているのかというのを一度見て、その中から自分の中でかわいいをチョイスして、自分の中でなかった動きは動いて修得したり、かわいい動きは、真似をするようにしてストックを増やしています。ジャンルは絞らず、世の中に出ているものは何でもみるようにしています。
1人ひとりのかわいさをどう出すか・・・
今回「オルガル」を演じてみていかがでしたか?
細川:
最初にお話しをいただいた時、キャラクターがかわいいなと思い、どうやってこのキャラクターのかわいさを表現しようかと悩んだのが今では懐かしいです。「オルガル」は、撮影開始以来、2か月ごとに収録をしていて、もう1年以上になるのですが、そこまで長くお付き合いさせていただくタイトルがなかなかなかったので、日々愛着がわいています。
「オルガル」のキャラクターづくりで苦労した点はありますか?
細川:
1人ひとりにエピソードがしっかりあり、そしてみんなが主役。「かわいい」も一人ずつ違うのでどう表現するかは苦労しました。
キャラクターのかわいさを出す際に工夫した点はありますか?
細川:
キャラクターによってかわいさがあって、一つの動きに対してキャラクターの特性を出せるように考えました。私だったらやらないけど、そのキャラクターがやったらかわいいという動きを出せるようにしています。
小沼:
キャラクターによっては、女性らしく少し肩を入れて丁寧気味に笑う仕草がかわいいなって思いますが、私が真似をしようとしてもかわいくなくて…
細川:
わかります!「このキャラがやるからかわいい!」というのがポイントで。普通、女性がやらなかったとしても、そのキャラクターがやるとかわいいと思える動き、そのキャラクターのかわいいを追求することが大切だと思っています。
こだわったのは「新鮮さ」
撮影現場で意識したことはありますか?
細川:
リハーサルで、一人でシミュレーションをしたら、1発本番「ワンテイク」にかけるということですね。「オルガル」のキャラクターたちは、「新鮮さ」が特徴だと思っています。普段の女の子たちの初々しさというか慣れていない感じがあるのがいいと思っているので、何度もテイクを重ねてしまうことで新鮮さがなくなり、段取りになってきてしまうのは避けたいと思っています。動きを時々間違えてしまうこともありますが、動線を間違えたとしても、軌道修正をしてNGにしないようにする。その子になりきっているので、その子だったらこういう風にするだろうなと演技をしていると、自然とNGテイクもNGではなくなるので、そこまでキャラクターを自分にしみこませることは常に意識をしていました。
海老沼:
それが、キャラクターたちの自然なかわいらしさにつながっているんですね!
「オルガル」のモーキャプを通して、細川さんをはじめアクターさん達に「かわいらしさ」を教えていただいています。本当に貴重な経験をさせていただいてます!
収録の思い出はありますか?
細川:
他のモーションアクターさんと2人で演技をしたことです。普段はそういった機会がなかなかないので嬉しかったですし、いい思い出になりました。いい映像が撮れたと個人的には思っています(笑)。2人で撮れて嬉しいという気持ちが役にも反映されていると思います。
小沼:
2人絡みのシーンはキャプテン(プレイヤーの方)の反響も多く、美弥花と若菜の友情や、絆を感じるシーンなどは特に反応も良かったように思います。やっぱりかわいい女の子たちがキャッキャと年相応に楽しそうにしている姿は、ほほえましいですし、愛おしいですよね。
海老沼宏之(Ebinuma Hiroyuki) 3DCGディレクター(写真中央)
2015年サイバーエージェント入社。3DCG黎明期から15年以上、家庭用ゲーム開発、TVアニメや映画などの制作に携わる。「METAL GEAR SOLID V」ではリードアニメーターを担当、「スマイルプリキュア!」のエンディングCGや「テイルズオブ」等のアニメーションを制作。現在は、3DCGディレクターとして、オルタナティブガールズの開発に携わる。
小沼千紘(Konuma Chihiro) モーションリーダー(写真左)
東京工芸大学芸術学部 ゲーム学科を卒業後、2015年新卒としてサイバーエージェントへ入社。現在は、オルタナティブガールズのモーションリーダーを担当。
「オルガル」のもう1つの特徴でもあるVRですが、VRでの収録はいかがでしたか?
細川:
1分半の中に、いい緊張感があるので、そこにぐっと集中できるのは、私には合っています。本当に、360度みえてしまうので、気は抜けないですけどね(笑)。全部見られてると思うと本当に緊張します。1モーションの長さよりも、360度全部みられている方が大変です。
「オルガル」のVRをスマホで見てどう感じましたか?
細川:
みんな寄ってくるし、かわいいんです。あとどこにいるのかなと探すのも楽しみで、部屋で「あーいたいた」って探して楽しんでいます。
VRモード画面
細川:
詩音ちゃんの襟直しのVRも「どきっ!」としました。
小沼:
それがすごく評判良くてそれ以外の動きも全部修正したんですよ。「オルガル」は「50センチの距離感」というコンセプトもすごく大切にしていたのですが、収録してみると距離感が詩音が一番近かったんです。近づけると全身の動きが見えなくなってしまうので、他の子は全身が見えるようにしていたのですが、近づけた方がキャプテン(プレイヤーの方)の反応がよかったので、その後全て直しました。
ずっと愛されるキャラクターをつくる。
今後も「オルガル」の収録が続きますが、意気込みをお願いします?
細川:
もうすぐ1周年ですよね?
海老沼:
はい、そうです!あっという間ですね。これもキャプテンの皆さんのおかげです。本当に感謝しています。
細川:
皆さんに「かわいい」と思ってもらえるキャラクターづくりに少しでもご協力できたら嬉しいです!
海老沼:
キャプテンの皆さんにいつまでも愛されつづけるキャラクターをつくっていきたいと思っています。「オルガル」に今後もご期待ください!
小沼:
より多くのキャプテンに、「オルガル」の世界とキャラクターを好きになってもらいたいと思っています。生きいきとして「かわいい」彼女たちの姿を今後も見守っていただけますと幸いです!
<「オルタナティブガールズ」とは>
超美麗3Dグラフィックでおくる美少女RPGです。主人公(プレイヤー)は“オルタナ”と呼ばれる少女達が通う「妃十三学園(ひとみがくえん)」へと招集され、オルタナ達と共に学業や戦闘訓練を行いながら、町に現れる“夜獣(ナイトビースト)”と戦う共同生活を送り脅威に立ち向かいます。このゲームの最大の特徴であるVRモードを搭載したストーリーでは、市販のスマートフォン向けVRゴーグルを使うことで、キャラ達が実際にそこにいるかのような没入感をお楽しみいただけます。また上坂すみれさん、茅野愛衣さん、竹達彩奈さんら人気声優のキャラクターボイスも大きな魅力です。
公式サイト:https://lp.alterna.amebagames.com/