【チャリ走VR】開発初期段階の話

はじめに

本投稿では、先日リリースされたPlayStation®VR専用ソフト「チャリ走VR」の舞台裏について少しお話をさせて頂きます。もともと「チャリ走」というのは、クリエイターの護美童子さんによって生み出されたアクションゲームで、それをVR上で表現するというのが今回の試みとなります。既にプレイして下さった方は気づかれたかもしれませんが、本作「チャリ走VR」は「チャリ走3D」の世界と非常に似ています。なぜ世界が似ているのか?技術面から見ていきたいと思います。

 

 

チャリ走VR

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チャリ走3D

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App Store
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Google Play bikerider-vr_googleplay

 

 

 

モック作成

カジュアルゲームの開発初期段階というのは、良くも悪くも中規模~大規模なゲーム開発ほどガチガチな仕様が練られていることが少なく、エンジニアの自由な発想から着手することが多いでしょう。カジュアルゲーム開発だけに、仕様変更もカジュアルに、息をするように行われることをエンジニアは留意しておかねばならないため、その点は小規模ゲーム開発ながらに難易度の高い部分ではあります。

 

もちろん全く企画職が仕事をしないわけではありません。当然の事ながら、大まかな方向性が決まらないことにはエンジニアも何から着手して良いか分かりませんので、いくら自由な発想が可能といえどもそこだけは決まっています。

 

当初はいくつかのステージがあり、プレイヤーがステージを選択してチャリ走の主人公となって走り回るというものでした。次章からは、作成していたステージの一部を紹介していきます。

 

 

森ステージ

1つ目のステージとして考えられていたのは、鬱蒼とした森をひたすらにチャリで走るというステージでした。開発に利用していたHMDは「Oculus Rift Development Kit 2」でしたが、FPS75を保つのは容易なことではありません。図のように最適化されていない大量の木を配置するという行為が既にアウトです。

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街ステージ

2つ目のステージとして考えられていたのは、都会の道路をチャリで走るという現実では絶対に出来ないような事をVR上で表現しようというものでした。

bikerider-vr_city

 

チャリ走のようなエンドレスランゲームは、大きなステージをタイルという小さな要素に分解して構成するのが良いでしょう。街のステージのタイルをブループリントで作ると下図のように、両端に建物を配置して中央をプレイヤーが走れるようにします。この作り方にしておくことで非エンジニアでもタイルの編集を行うことができるため、エンジニアの負担を軽減することができます。

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開発が進むに連れて小さなギミックを導入していく流れになり、手始めにジャンプ台やコインを配置したりと少しずつステージを賑やかにしていきます。

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紹介してきた図のように見た目を表現できるとはいえ、最適化されていない建物などを好き放題配置しているとFPS75を保つことは非常に困難です。ご存知の方もおられるかと思われますが、PlayStation4のスペックをPCに置き換えると「Intel Core i5-2500K・GTX660 Ti」という情報があります。開発中のPCはもちろんPS4よりもスペックが高いので、PS4で動作させた時に何が起こるのかは明白でした。

 

 

企画の大幅変更

これまで現実に近い世界観を走らせるために様々な思考錯誤をしていましたが、ある時現実に寄せた世界観というのが本当にチャリ走VRを実現させるのに適しているのか?と話題にあがりました。確かに、現実の世界をチャリで走り回れるという事に憧れる部分はありました。そういった世界観の問題もありますが、その他諸々の事情も含めて最終的にこれまで作ってきたものはやっぱりチャリ走には合わない!という結論が出ることに時間は掛からなかったのです。チャリ走3Dのようなチャリ走らしいチャリ走を作ることがベストなのだろうと。そして、企画書は作り直されました。

bikerider-vr_plan

 

上図からはチャリ走の世界観が以前よりも増して感じられると思います(少なくとも私は)。これまで作成していたもの全てとは言いませんが、ほぼ全てを捨てて切り替えました。もちろん、チャリ走らしいシンプルな世界観に切り替えたからといって開発が楽になったという訳ではありません。切り替えによる問題は幾度となく発生致しましたし、試行錯誤の毎日でした。

 

 

まとめ

開発を通して日々感じていたのが、VRアプリケーションの開発において相性の良い企画と悪い企画があるのは間違えないという事です。複数のオブジェクトが激しく動くシーンや、動的にオブジェクトを生成しなければならないシーンというのは良く考えて実装する必要があると思います。非VRアプリケーションで通用していた実装方法が通用しないのがVRアプリケーション開発ですので、当たり前にできると思っていることだとしても実際に試してみなければ安心することはできないです。

 

 

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