エンジニア出身の取締役が目指すものとは?
サイバーエージェントのエンジニア組織がまだ50人くらいだった時に、エンジニア新卒採用第一号として入社した山田。プログラミングが大好きで、エンジニアとして開発にずっと携わっていきたいと思っていた山田が、なぜマネジメントに徹するようになったのか。10社以上の子会社が所属するゲーム・エンターテイメント事業部(SGE)の子会社QualiArtsの取締役として、今後目指していくこと、さらに事業部全体の技術戦略についてききました。
エンジニア組織が50名だった頃に入社
サイバーエージェントに入社した理由を教えてください。
大学時代にWEBサービスを制作していたこともあり、ウェブアプリを開発している会社に就職したいと思っていました。そんな中、接した社員の方や環境がいいと思ったのはもちろんですが、私が入社したタイミングは2008年で、サイバーエージェントのエンジニア新卒採用第1期でした。社内にはまだ、50名程のエンジニアがいただけでした。この先組織がどうなるのかは分かりませんでしたが、これから伸びる業界で、かつ若いうちから活躍できる環境で働きたいという気持ちがあったので、ここならいろんな挑戦ができると思い決めました。
50名しかいなかったんですね!
そうなんです、そこに24名の新卒エンジニアが配属されたので(笑)。ほとんどが新卒でした。
そんな中入社して、入社後どんなキャリアを積んだのですか?
入社以来ほぼゲーム開発に携わっています。最初は、サーバーサイドエンジニアとしてブログサービスに携わっていましたが、恋愛シミュレーションゲームを開発することになり開発を担当しました。そこから、さまざまなモバイルゲームを開発し、ゲームに本腰を入れるという2011年のタイミングで、ゲーム事業部が立ち上がり、まだ開発中のプラットフォームに連携するゲームを3本つくることになり、全ての開発マネージャーを任されました。
新規タイトル3本の開発マネージャーに?元々マネジメント思考があったのですか?
マネジメントに興味はありました。ただ、元々仕事以外でもずっとプログラミングをしているくらい開発が好きだったので、その頃はまだ現場で開発をし続けたいという気持ちの方が強かったので、プレイングマネージャーでした。
山田 元基(Genki Yamada)
2008年サイバーエージェントにサーバサイドエンジニアとして入社。Amebaゲームやゲーム技術基盤組織の設立などに携わる。2020年にQualiArts取締役に就任。現在は、新規サービスのプロジェクトマネージャー(PM)を兼務しながら、ゲーム・エンターテイメント事業部(SGE)の技術組織作り、新規ゲームプロダクト開発にも注力している。
”ボトルネックになっているよ”と言われ、マネジメントに徹するように
いつからマネジメントに集中したのですか?
転機になったのは、担当する組織規模が一気に拡大した時です。モバイルゲームにより力をいれていくというタイミングで、様々な組織が1つになり、ゲームも年間で10本以上つくることが決まりました。その時に、プレイングマネージャーでは全くまわらなくなってしまったんです。どうしても自分でも手を動かしたくなってしまって、開発も遅れてしまい、組織も見切れなくなってしまい…その時に、「元基がボトルネックになってるよ」とはっきりと言われました。自分の限界が組織の限界になっていると気付き、規模も大きくなる中で、このままではだめだと思い、マネジメントに徹することを決めました。
そこから変わったことはありますか?
得意な人に任せるということができるようになりました。頭ではわかっていたのですが、それがやっとできるようになりました。マネジメントに振り切ってからは、技術戦略室を立ち上げ、室長としてエンジニア組織全体の戦略・組織作りをするようになりました。そこから、課題を見つけ、課題を解決するために、組織としてどんなことができるかを考えるようになりました。
具体的にはどんなことを?
当時はゲーム開発の数を追っている時で、エンジニアが働き続けたいと思える環境とは言い切れない状態でした。3年後を見据えた技術戦略を毎年策定して目指す方向性を提示したり、ゲーム基盤を開発する組織をつくったり、開発ディレクターという役職を設置したりしました。開発ディレクターを置いたことで、開発は大分スムーズになりました。
エンジニアみんながやりたいことをやれる組織をつくる
開発ディレクターを置いた時はどんな課題があったのですか?
スマートフォンゲーム開発へシフトしたタイミングで、ゲームの開発規模が大きくなり、エンジニアリーダーの役割が、スケジュール管理、評価、開発のリードなどどんどん増えていき、何でもやるという状態になっていました。そんな中で、マネジメントに時間がとられすぎて実装時間がとれない、開発に集中したいという声も多くなりました。強みによって役割を変えたほうがいいのではとなり、開発をまとめたりマネジメントをしたい思考の人と開発に集中したい人で分け、マネジメントタイプで適性がありそうな人を開発ディレクターにしようとなりました。もちろんやってみて、違うと思ったらエンジニアに戻れます。
開発ディレクターが担う役割は?
開発のスケジュールと品質を守ることに責任と権限をもちます。ただ、仕様変更で、開発に起因しない形での遅延は開発ディレクターの責任ではないとしました。スケジュールと品質さえ守ってくれていれば、空いた時間は好きに使っていいとしていたので、今では、管理ツールを作ったり開発の役割を持っている人も多いです。
おいてみて、どうでしたか?
開発に集中したい人が開発に集中できるようになりました。また開発ディレクターが開発のスケジュールに責任を持つ事で開発計画の精度を上げる事が出来ました。その結果、開発フローが整い品質の高いプロダクト開発が行えるようになりました。これまではエンジニアリーダーが複数の役割を担っていたため精度を高めきる事が出来ていなかった事がわかりました。開発ディレクターはあくまで、そのプロジェクトでの役割としているので、もし、次のプロジェクトになった時に、エンジニアに戻りたいという人がいたら戻れるとしたこともプラスに働きました。そもそも、組織のために、プロジェクトのために貢献したい人が多いので、うまくいっているというのもあると思います。
取締役になる前からさまざまな組織課題を解決してきたと思うのですが、今QualiArtsのエンジニア組織が目指しているものを教えてください。
最近、QualiArtsエンジニアの3つのコア・バリューを策定しました。人も増えてきた中で、なんとなくこういう組織、こういうことを目指しているはあったのですが、浸透させていくために、言語化をしました。
1つ目は、「主体的に進めよう。」QualiArtsは、Amebaのゲーム部門が独立した子会社です。Amebaゲーム部門時代からエンジニアが主体的に開発を進めることで開発力が向上してきました。例えば、新規技術からこの技術を使ってこういうゲームを開発したらおもしろいものが作れると技術始動で開発が始まったタイトルもあります。これは一例ですが、主体的に進めようを改めて大事にすることとして定義しました。2つ目は、「技術を追求しよう。」当たり前ですが、技術を追求しつづけるエンジニア組織でありたいと思っています。事業やプロダクトにつながりそうな技術を勉強する時間を2割くらい確保できるようにし、その中で学んだことを半年に1回社内で共有するようにしています。3つ目は、「ゲーム作りを楽しもう。」リリース直前はとにかくいろんな意味で追い込まれて大変ですがゲームづくりを楽しもう、企画にも積極的に携わろうという意味を込めて決めました。
まだまだ、若い組織ではありますが、技術力を高め、エンジニアみんながやりたいことがやれて、働き続けたいと思える組織をつくっていきたいと考えています。
”信じて、任せて、まずはやってみる”
ゲーム・エンターテイメント事業部全体のエンジニアボート”TEC8”のリーダーとしてもさまざまな施策を行っていると思うのですが、事業部全体で目指していることを教えてください。
ゲーム・エンターテイメント事業部(SGE)は、サイバーエージェントの10社以上の子会社が所属している組織です。メディアミックスIPや、女性向け、カジュアルゲーム、2Dや 3Dなど、それぞれの会社が得意分野にあわせてさまざまなタイトルを開発・運営しています。各社が裁量・意思決定を持っているのですが、「自分達の組織は自分達でつくる」という考えが浸透していて、技術のスキルアップ、ノウハウ共有や、その他多くの子会社横断組織や施策も活発に行われています。子会社の考え方を尊重しつつ、各社のレベル感を組織全体で上げていき、ヒットタイトルを生み出すために、「世界に誇れる開発力の追求」をしていきたいと考えています。そのために、今は「開発基盤」「開発プロセス」「成長機会」の3つの軸でさまざまな施策を実施しています。
全体で活用できるような開発基盤は積極的に開発していき開発期間の短縮を目指しつつ、過去の経験を次のプロジェクトには絶対に生かすを当たり前にしていき、”優秀なエンジニアが育ち集まる組織”にするために、次の抜擢が常にできる状態を作り成長機会をどんどん生み出していきたいと思っています。ボードメンバーは6人いるのですが、それぞれに役割をもって、さまざまな施策を進めています。
組織づくりで意識していることはありますか?
”まずは、やってみる”と”信頼して、任せていく”です。
どんどん役割が大きくなり責任が増えることで、課題が大きくなって動けなくなるのではなく、まずはやってみてほしいですし、そのために子会社横断でサポートできることはサポートしていけたら良いと思っています。また、私自身身の丈以上のことを任されて成長した実感があるので、信頼して、任せていくは続けていきたいですし、任せるものを増やせるように、事業もどんどん大きくしていきたいと考えています。
最後に、今後の目標を教えてください。
誰もが知っているサービスをつくりたいというのがずっとある夢です。そのためにも、開発力を高め、エンジニアの組織もいい組織にしたい。それを実現するために、職種にはとらわれず自分ができること、一番バリューが出せることをこれからもやっていきたいと考えています。
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https://www.cyberagent.co.jp/careers/special/engineer2022/