AIの力でゲーム開発を変えていきたい。新卒ML/DSエンジニアの挑戦とは?

2022年に新卒入社し、10社以上の子会社が所属するゲーム・エンターテイメント事業部(SGE)に配属されたML/DSエンジニアの伊原滉也と髙橋ともみ。「開発効率と品質の最適化」をミッションとする「SGEコア技術本部」(以下コアテク)のAI技術研究まわりを任され、日々AIを活用しながらゲーム開発の課題解決を行っている。そんな2人の今までの研究内容や現在の仕事について、ゲーム事業ならではの魅力ややりがいについても聞きました。

ゲームづくりにAIを活用したい

今まではどんな研究をしていたのでしょうか?

伊原:最適化や強化学習について研究をしてきました。学部時代は、麻雀AIの研究をしていましたが、大学院からは、国内大手建設会社との共同研究でトンネルの施工計画を自動生成するAIの研究をしていました。掘削シミュレータを開発し、その中でAIが何度も繰り返し試行錯誤することで、最小コストで施工するための最適な計画を探索します。この研究で一定の成果を挙げたことで、自動車、食品、物流など様々な企業から依頼をいただいて共同研究を行っていました。現在もサイバーエージェントで働く傍ら名古屋工業大学の客員助教として研究を続けています。

髙橋:私は、HCI(ヒューマン・コンピュータ・インタラクション)の研究をしていました。小さい頃からゲームが好きで、NPCをもっと人間に近い、本当にそこに存在しているかのような存在にしたいとずっと思っていて、その思いとHCIの分野は親和性が高いと感じたため選びました。研究内容としては、チャットボットやロボットなどのエージェントを人と対等に接してもらえる存在にすることを目指して、人の性質を参考に対話や感情表現などをデザイン・実装し、その効果を実験で検証していました。エージェントを人と対等に接してもらえる存在にするためには、発話などのバリエーションが豊富で多様性を持っていることや、相手に応じて振る舞いを変えるような適応性を持っていることも大切であると感じていたので、必要に応じてAIも活用していました。

髙橋 ともみ (タカハシ トモミ)

京都工芸繊維大学 大学院工芸科学研究科 設計工学専攻 博士後期課程修了、2022年新卒入社。ゲーム・エンターテイメント事業部(SGE)コアテクにてシナリオ制作支援ツールの開発等、主に自然言語処理関連のタスクを担当。

なぜサイバーエージェントを受けようと思ったのですか?

伊原:インターネットの分野にチャレンジしたいと思っていたので、サイバーエージェントを受けました。最初は広告クリエイティブでのAI活用に興味があったのでAI事業本部に興味を持っていました。

髙橋:将来的にゲームのキャラクターにAIやHCIを活かせればと思っていたのでゲーム関係の会社か、HCIに関わっている会社で考えていました。サイバーエージェントのAI Labには、HCIを扱う接客対話チームがあって「ヒトが信頼したくなる対話エージェント」を目指して研究をされていて理想とするエージェントとかなり近いんじゃないかなと感じたので受けてみようと思いました。

そこからコアテクに配属を決めた理由は?

髙橋:サイバーエージェントの面接を受けている時に、他にはゲーム系の会社を受けているとお伝えしたところ「ゲーム事業でもちょうどAIを本格的にやろうとしているよ」と教えてもらったんです。そこから興味を持つようになりました。AI事業部と最後まで悩んだのですが、やはりいつかゲームのキャラクターを人間らしくしたいという思いが強かったので、コアテクに配属を決めました。加えて、ゲームのドメインデータを学習用にたくさん集めるのは一般的にはコストがかかることだと思うので、そこのコストをかけずにデータを扱えるという点でも惹かれました。

伊原:自分の研究をコンテンツ生成やクリエイティブなものに活用してみたいという気持ちがありました。これまで扱ってきた題材は、良し悪しがシンプルに数値化できて評価しやすい対象が多かったのですが、人の反応や感性が関わるクリエイティブ生成を最適化できたらおもしろいなと思ったんです。また、各社から課題を収集し、スポットでプロジェクトに入って解決していく横断組織としての立ち位置が、様々なサービスに関わることができ、多様な課題に取り組める点も魅力的だったので希望しました。

伊原 滉也 (イハラ コウヤ)

名古屋工業大学 大学院工学研究科 情報工学専攻 博士後期課程修了、2022年新卒入社。ゲーム・エンターテイメント事業部(SGE)コアテクにてゲームバランス調整支援等、主に強化学習や最適化関連の研究開発を担当。

任せて・応援してくれる組織がコアテク

コアテクとはどういった組織でしょうか?

髙橋:ゲーム・エンターテイメント事業部は、子会社制をとっており、10社以上の子会社が所属していて、各社が各々の戦略や得意分野で日々開発を行っています。コアテクは、そんな事業部を横断する組織です。各子会社が横断的に利用できる共通基盤の開発やセキュリティ対策、AI技術の研究をはじめ、開発タイトルのパフォーマンス確認や各プロジェクトで発生した課題の解決など、幅広い業務をカバーしています。コアテクはまだできたばかりの組織で、現在は約15名が所属しています。

伊原:ミッションごとに1−3名程度で構成されていて、各々全く異なることをしているので、毎日お互いに何をしているのかや進捗などを夕会で共有しています。私達が携わっているAIチームは、開発効率や品質の向上を目的に、各社・各プロダクトの課題をAIで解決できないかを日々模索しています。

髙橋:AIチームは、現在6名が所属しています。事業部全体として、年次関係なく任せるという文化があり、挑戦しようという気持ちがあればどんどんやっていいよと受け入れてもらえて、サポートもしてくれるので、仕事がしやすいですし楽しいですね。今研究している課題も、私達のやりたいことと実際に事業部にあるニーズをかけあわせて決めていただきました。

具体的にはどんな研究をしているのですか?

伊原:私は、新規開発中タイトルのゲームバランス調整支援をしています。ゲームをプレイするAIを開発し、リリース前のゲームをAIにプレイさせることによって、ゲームバランスやキャラクターの性能を評価していく、プランナーを支援するAIシステムです。従来は、人が経験と感覚からバランスを判断していたのですが、そこをAIによる高速な反復試行でサポートします。現在は、どんなデッキ構成でも上手くプレイできるような汎用的なAIの学習に注力しています。

髙橋:私は、自然言語処理(NLP)を使ったクリエイターさんの支援ツールを開発しています。1つは、シナリオライターさんが、新しくセリフを考える時に、過去のセリフとの整合性を取るために「こんなセリフあったような…」という曖昧な状態でのセリフ検索を実現してくれるセリフの曖昧検索システムです。さらに、セリフのキャラクター性のチェック等に使える、セリフからの発話キャラクター推定にも取り組んでいます。他にも、キャラクターやセリフなどの情報から適切なモーションを予測してコマンドを付与するスクリプト制作支援システムの開発にも携わっています。全てを一人で行っているわけではなくて、SGEの子会社の皆さんや、AI事業部の皆さんと一緒に取り組ませていただいています。いろんな方と接点が持てて、いろんなシステムの開発ができて、楽しく充実しています。

AIを活用して実現したいこととは?

やりがいを教えて下さい。

伊原:技術を応用できる範囲が広いこと、難易度の高い課題を任せてもらえることにやりがいを感じています。ゲーム×AIときくと将棋や囲碁のAIが思い浮かぶかもしれませんが、シナリオ、敵AI、ゲームバランス調整支援、グラフィックス、アニメーション、チート対策など様々なものに活用できるので、思っていたよりも応用できる範囲が広く驚きました。子会社ごとにそれぞれの強みを活かして開発を進めているので、ゲーム数が多く、ターゲットやジャンルも様々なのも面白いですね。

高橋:ゲームAIを開拓していくフェーズに携われることにやりがいを感じています。AIがまだまだ活用されていないところでAIを活用して、クリエイターさんの作業負荷を減らしたり、作業フローを変えられたりするところに可能性と面白さを感じています。少しでも開発する皆さんの力になれたらと思っています。そもそも扱うデータがゲーム関連なので楽しいというのもあります。ユーザーの方が楽しむためのゲーム開発の一部に携われていると思うだけでワクワクします。

今後の目標について教えて下さい。

伊原:開発者の方がクリエイティブやサービスを創ることに集中できるように、それ以外の負担をAIを使って減らしたり、支援できるような研究をしていきたいです。また、熱中してもらえる仕掛けをAIで作れたらと考えています。長期的には、日本をゲームAIの分野でトップにしたいという目標があります。

髙橋:自然言語処理を極めたいです。「ゲーム事業の自然言語処理といえば、私」となれるように頼れる存在になっていけたら嬉しいです。まずは、業務フローを変えるところを実現して、開発をしている皆さんがやりやすくなったと実感してもらえたら嬉しいです。そしてゆくゆくは、NPCのAI化、ゲームの中で本当に生きているようなNPCを作りたいです。

LINEで送る
Pocket

おすすめ記事